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私の児童虐待4

私の児童虐待4 柳 美里

1、http://s02.megalodon.jp/2009-1026-2158-38/g2.kodansha.co.jp/?p=1018
2、http://s01.megalodon.jp/2009-1026-2159-25/g2.kodansha.co.jp/?p=1018&page=2
3、http://s04.megalodon.jp/2009-1026-2200-11/g2.kodansha.co.jp/?p=1018&page=3
4、http://s01.megalodon.jp/2009-1026-2201-08/g2.kodansha.co.jp/?p=1018&page=4




1、
一九九四年、国連総会で採択された国際条約である「子どもの権利条約」が日本でも批准された。当時二十六歳だったわたしは、『子どもによる子どものための「子どもの権利条約」』と『子どもの権利条約─条約の具体化のために』という二冊の本を購入して条文をくりかえし読み、「1 締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる」という第十九条をノートに書き写した記憶がある。
「児童虐待」に関する新聞記事を切り抜き、子どもを「虐待」して死に至らしめた親たちの言い分に赤線を引くようになったのも、同じころだ。
「部屋を散らかしたので注意したが、言うことを聞かないのでカッとして首を絞めた」(九五年三月、五歳の長男の首をストッキングで絞めて殺し、三歳の次男の背中を刺して二週間の怪我を負わせた三十二歳の母親の言葉)
「長男が前夫に似ていて不快だったので殴った」(九五年七月、四歳の長男の背中を膝で蹴り、逆さに持ち上げて台所の床に落とし、うつ伏せになった背中に膝で体重を加えるなどして意識不明の重体に陥らせた愛人を庇った二十二歳の母親の言葉)
「自分の子供を世間に笑われないような良い子にするため、厳しくしつけていた。つい力が入ってしまった」(九七年三月、三歳の長男の言葉遣いや返事をしないことに腹を立てて、腹を蹴るなどして死亡させた二十五歳の父親の言葉)
「泣いたら顔をつねった」「車内で食べものをこぼすと殴った」(九七年九月、二歳の長女のおもらしに腹を立て、車から引き摺り出して殺害した二十三歳の母親の言葉)
──これだけではないだろう、ここに至るまでの道程があるだろう、犯人が母親、父親となるまでの二十年、三十年間を辿り直さなければ、何故我が子を「虐待」して殺害したのかを理解することはできないし、理解できなければ、事件を食い止める手立てを見つけることはできないのではないだろうか──。

2、
子どもへの虐待と暴力団の不法行為は、アンダーグラウンドの出来事として処理されるという点で似ている。警察は殺人事件にでもならなければ、暴力団にも家庭にも「身内の問題」として介入しない。異なるのは、組織化されている暴力団は暴対法によって取り締まることができるが、拳銃などの違法な凶器ではなく、本来子どもを護り慈しむべき「保護者」の手や脚が凶器となる子どもへの虐待は、「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒」することができるという「懲戒権」(民法第八二二条第一項)によって、手厚く護られ放任されている、という点だ。
家族以外の立ち入りを禁止されている「家庭の闇」は、この世のなかのどの闇よりも濃い「闇の中の闇」なのではないだろうか?
長谷川博一さんは、心理療法、犯罪臨床心理学(鑑定)、児童虐待、家族病理、自殺・自傷行為を専門とする臨床心理士で、『子どもたちの「かすれた声」』『たましいの誕生日 迷えるインナー・チャイルドの生きなおしに寄り添う』(日本評論社)、『お母さんはしつけをしないで』(草思社)、『断ち切れ! 虐待の世代連鎖子どもを守り、親をも癒す』『あのとき、本当は……封印された子どもたちの叫び』『カウンセリングマインドの重要性 学校臨床の現場から』『よい子になりたい 少女の心に棲みつく悪魔』(樹花舎)、『たすけて! 私は子どもを虐待したくない』(径書房)など多数の著書がある。
長谷川さんは、大阪教育大学附属池田小事件を起こした宅間守被告に面会し、「臨床心理士が控訴を取り下げないように説得している」と報道されて、激しいバッシングに見舞われたにも拘わらず、被告自ら控訴を取り下げ死刑が確定した後に、十三回の面会を行ったことや、秋田連続児童殺害事件で畠山鈴香被告の心理鑑定を行い、拘置所内でのカウンセリング、文通を重ねたことで知られている。
最初は、取材をしようと考えていた。
しかし、長谷川さんの著書を十冊ほど読んで、このひとは、闇の外から懐中電灯で照らしてもなにも見えないことを知っている──、闇のなかに手探りではいっていき、全身を闇に浸して、闇を聴こうとしているのではないか、と感じた。
書くことを仕事に選んだ十八歳のわたしは、「詩とはなにか。それは、現実の社会で口に出せば全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、かくという行為で口に出すことである」という吉本隆明さんの言葉を、「書く」ことと「生きる」ことの根拠にしていたが、でも、もしかしたら、わたしの内に在る凍った闇を「聴くこと」によって溶かしてくれるだれかの耳を求めていたのかもしれない。
わたしは長谷川博一というひとの「闇を聴く耳」を信じて、「ほんとうのこと」を話してみることにした。
夏休みの最中、八月一日の夜のことである。

3、
長谷川 柳さんの場合、ご自身の状況をかなり自覚して、文学で表現されて、昇華というか浄化されているとは思うんです。もし完全にそうならば、もうカウンセリングは必要ないんですよね。でも表情なんかを初めて──すいません、こんなこと──生で拝見させていただくと、やはり、根は悲しい人だと、まだ悲しいままじゃないかなって気がするんですよね。
柳 悲しいまま?
長谷川 心の奥のほうに、何か手で触ってはいけないような、闇のようなものを抱えていらっしゃる可能性があるとすれば、カウンセリングを進めながら、どこまで自分でそれを察知して引き受けるかという作業になります。到達目標というのがあるとしても、やり過ぎてしまうと、一時的に日常活動ができなくなることもあります。
柳 自分の中で身動きできずにいる悲しみを引っ張り出して、どこかに連れ去るということですか?
長谷川 できればね。ただ、連れ去るという言い方は正しくないけど。その負の感情だけでなく、喜怒哀楽の感情それぞれが閾値を越えて、かなり激しく表現されてしまっているところを、ある程度まとまった形で表出できるようになる、っていうのが目標になるんでしょうか。私も間接的にしか伺っていないんですけど、柳さんは幼少期に大変なご苦労をされている。そのせいで、自己否定感というのがやはり強いようです。「私なんていなければいいんだ」という希死念慮が強くなっていく危険性もやっぱり考えておかないといけない。今日、初対面ですよね。
柳 はい。
長谷川 そう、まだ緊張されているね。普段のお仕事でも、人から話を聞く機会がありますよね。そのときと今日とは違います?
柳 基本的にしゃべるのは苦手なんです。
長谷川 今回、カウンセリングの体験をって、そもそもそう思われた理由は何ですか?
柳 二つ理由があるんです。一つは息子といっしょにいると、感情を押し殺しているか、感情を爆発させているか、どっちかの状態で、母と子という適切な距離を保つことができないんです。もう一つは、生きるのがしんどいということでしょうか……五月のはじめ頃に起きあがれなくなって、精神科に通院して、ジェイゾロフト(SSRI)という抗鬱剤を処方してもらったんですが、増量して行く過程で、強い睡眠薬に替えてもらっても全く眠れないという状態になって、独断で服用を中止したんです。今も、良くなったわけでは全然なくて、浮き沈みが激し過ぎて、日常生活や仕事に支障が出てしまう。

4、
長谷川 浮き沈みで、沈むというのはいわゆる鬱ですよね。
柳 鬱です。
長谷川 浮いているときは?
柳 例えば、インターネットで〈いつでも里親募集中〉という掲示板を見つけてしまい、捨て猫を一、二匹保護するならなんとかなるんですが、気がつくと十匹も……猫だけじゃなくて、捨て犬も保護したんですけどね……。
 
 
長谷川 そうですか。浮くとたいていその行動パターンですか。何かを、こう引き受ける。
柳 そうですね、何かを引き受ける。あと、もう作家をやめてドッグトレーナーになろうと決意して、専門学校に通いはじめるとか。マラソンをしていたこともありましたね。それも、山岳耐久レースとか、よりハードなレースをチョイスして、月二回のペースでエントリーしていました。
長谷川 興味深いですね。その浮いたときの行動は、共通項があるようです。愛情に恵まれていない動物たちに愛の手を差し伸べてあげたいという方向──結果的には荷物を背負ってしまうことになると思うんですけれど──もしくは自分の体に鞭を打つ方向ですね。健康にいいというよりは、自分の体を酷使する方向のどっちかに限られている。どちらにしても、心理的、物理的、身体的に自分の負担が増すという点で、共通しています。
柳 抗鬱剤を服用しはじめたのは、十四歳からなんです。父と母が別れてすぐの頃ですね。私は母について家を出て、窓から母の愛人の本宅が見えるマンションで暮らしたんです。本宅の妻が怒鳴り込んでくるというような修羅場もあって、居た堪らない日々を過ごしていたんですが、じゃあ父の家に帰れるかというと、父は暴力をふるうひとだったんですよ。私は鼻の骨を折られたし、母も鼓膜を破られているんです。何故、殴られるのか、よく解らないことが多かったですね。狭い家だったので、父親がテレビの前に横になると、またがないとトイレに行けないから、寝てることを確認して、そぉっとまたぐんですが、「親をまたぐとは何事だ!」と、もうボコボコにされる。「反抗的な目をするな」と殴られたこともあったし……でも、私が悪いときもありました。万引きで捕まったときは、鞭で全身を打たれて、全裸で車に乗せられて、遠くの公園に捨てられました。

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by office-nekonote | 2009-10-26 19:44 | | Comments(0)


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