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私の児童虐待 最終報告

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私の児童虐待 最終報告
高校中退以来、26年ぶりの父との対話 柳美里
《柳美里と児童虐待》
本誌第1号・第2号で作家・柳美里が執筆したノンフィクション『児童虐待』。「闇の中の闇」である家庭での虐待を、自身の問題として探ろうとする著者は、臨床心理士の長谷川博一氏と出会い、カウンセリングを受けている。カウンセリングの中で、繰り返し語られたのは、著者と息子との関係だけでなく、かつて父親から受けたという「虐待」とも呼べる体験だった。

1、http://megalodon.jp/2010-0309-1611-03/g2.kodansha.co.jp/?p=3777
2、http://megalodon.jp/2010-0309-1612-23/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=2
3、http://megalodon.jp/2010-0309-1613-12/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=3
4、http://megalodon.jp/2010-0309-1614-06/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=4



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私の児童虐待 最終報告
高校中退以来、26年ぶりの父との対話 柳美里
《柳美里と児童虐待》
本誌第1号・第2号で作家・柳美里が執筆したノンフィクション『児童虐待』。「闇の中の闇」である家庭での虐待を、自身の問題として探ろうとする著者は、臨床心理士の長谷川博一氏と出会い、カウンセリングを受けている。カウンセリングの中で、繰り返し語られたのは、著者と息子との関係だけでなく、かつて父親から受けたという「虐待」とも呼べる体験だった。

1、http://megalodon.jp/2010-0309-1611-03/g2.kodansha.co.jp/?p=3777
第1回

父が死ぬ前に、話しておくこと
酒井法子とわたしの共通点

酒井法子。
昨年八月初めに彼女の覚醒剤使用が発覚してからというもの、わたしは彼女の事件に気をとられ、十一月九日に懲役一年半、執行猶予三年の判決が出て、彼女が介護福祉士を目指して私立大学への入学を決め、入学式に出席するとかドタキャンしたとかいうあたりでスキャンダルとしての賞味期限は切れたようだが、わたしは今でも彼女の行く末を気にしている。

わたしは一九六八年生まれ、彼女は一九七一年生まれで三つ歳下、わたしが青春五月党を旗揚げして『水の中の友へ』で劇作家としてデビューした一九八七年に、彼女は「男のコになりたい」でレコードデビューを果たし、同じ時代を走りつづけてきたという意識を持っている。

そして、彼女は一九九九年七月に長男を出産し、その半年後の一月に、わたしも長男を出産した。

わたしと彼女は共に、十歳の(今年小学五年生になる)息子を持つ母親なのである。
一児の母親である彼女が、何故、覚醒剤に手を出し、手離せなくなったのか――。
わたしは、芸能界デビューに至るまでの彼女の生い立ちを知れば知るほど、(自称プロサーファーの夫の女性遍歴や、破綻した結婚生活も報じられたが)彼女の「現在」にではなく「過去」に、その原因があるのではないかという思いを強くしていった。
彼女の父親は、彼女が生まれた福岡で勢力を張る山口組の直参・伊豆組組長の舎弟分の酒井組組長だったという。

彼女の母親は、彼女を産んでほどなくして彼女を寺のお堂に置き去りにする。彼女は父親の妹宅に里子に出され、埼玉県狭山市で暮らすようになるが、父親の再婚に伴って福岡に帰り、二番目の母と暮らし、異母弟と異母妹が誕生する。小学校高学年のときに、義母と父親が離婚し、三人目の母親と二人暮らしをはじめる――。

2、http://megalodon.jp/2010-0309-1612-23/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=2
真の感情を生きられなかった子ども

初公判の弁護人の被告人質問のときに、覚醒剤を使用した理由を訊ねられ、
「肉体的にも精神的にも疲れていました。わたしは他人に期待されると頑張りすぎるので、(覚醒剤を使用すると)からだが動くようになるという感覚がありました」
と彼女は答えている。

彼女は、実母と実父に養育を放棄されたことから「親から愛されていない」というメッセージを受け取り、「あるがままの自分は愛される価値がない」のだという自己否定感を強く持ったのではないか? 数年置きに替わる養育者(他人)の顔色をうかがって、子どもらしい喜怒哀楽を表すことができなかったのではないか? 養育者(他人)に気に入られるために、素直で、おとなしく、かわいらしい女の子をアイドルのように演じなければならず、家の中でも常に舞台に立っているような緊張を強いられていたのではないか?

真の感情を生きられなかった子どもは、大人になっても無意識のうちに真の感情を遠ざけるようになるものだが、それらの感情は消えて無くなるわけではない。
デビューの二年後、十八歳のときに、彼女の父親は高速道路の事故で死亡する。車のカーステレオには彼女の「おとぎの国のBirthday」のテープがはいっていたという。
長男出産の翌年、芸能界の育ての親であるマネージャーが事務所のトイレで首吊り自殺をする。彼は人気絶頂で事務所から飛び降り自殺をした岡田有希子の担当マネージャーでもあった。

不幸に見舞われると、登場を許されなかった真の感情(どうしようもない悲しみや怒りや悔しさや無念さ)が津波のように隆起してくる。
彼女は結婚・出産を経ても、NHKの朝ドラ『ファイト』の母親役、『まるまるちびまる子ちゃん』の母親(さくらすみれ)役、『それいけ! アンパンマン ゴミラの星』のヤーダ姫役、自動車や頭痛薬のCM、育児雑誌の表紙、日中文化・スポーツ交流年の文化親善大使、裁判員制度のPRビデオ主演―、「ママドル」「清純派」「優等生」のイメージから外れることはなかった。

学校行事やPTAにも積極的に参加し、「とてもいいお母さん」だったと、息子の学校の父母は口を揃えて評価している。
彼女の真の感情は、現実の中でも、ドラマやCMなどのフィクションの中でも、登場することを許されなかったのだ。

警察は「足の踏み場もないほど散らかり」「カビが生えていた」という港区南青山のマンションの一室から、大量の吸引ストローと覚醒剤がはいった化粧ポーチを押収した。
息子を寝かしつけたあとで、覚醒剤を吸引する彼女の姿を想うと、胸が痛む。
彼女の目は、疲労でどんよりと曇っている。
CDケースの上に覚醒剤の結晶を置き、テレフォンカードで磨り潰す。
粉になった覚醒剤を、ストローで鼻から吸い込む。
数分後に、彼女の瞳孔はひらいている。
疲労はどこかに消し飛んでいる。
唇がかにわななき、顔にかかった髪の毛が微かな吐息にふるえて――。

報道からは抜け落ちていたこと

彼女は、ものごころついたころから堰き止め(抑圧しつづけ)ていた感情を、薬物という出口から少しずつ解放していたのではないだろうか?
だとしたら、彼女に必要なのは、社会的な制裁や法的な懲罰でもなければ、介護福祉士の勉強をすることでもない。
薬物依存、薬物濫用は、非常に重い「病気」であるということを忘れてはならない。
「病気」に必要なのは、なによりも先ず「治療」である。

信頼のおける臨床心理士を見つけ、カウンセリングによって薬物依存との因果関係を突き止め、真の感情に至る道を塞いでいるものを取り除いたあとに、怒りを怒り、悲しみを悲しみ、憎しみを憎しみ、喜びを喜び、楽しみを楽しむことを習得しなければならない。

3、http://megalodon.jp/2010-0309-1613-12/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=3
そして、禁断症状が治まり、ふたたび薬物に手を出す危険が低くなったら、その後の身の振り方をじっくりと考える――、などと書くと、「不幸な境遇でも、薬物などに手を出さず立派に社会生活を営み、きちんと子育てしているひとはたくさんいる。甘やかすな」という声が聞こえてきそうだが、暴力団組長を父親に持ち、生後間もなく実母に棄てられ、養育者が三回も替わり、父親を交通事故で失い、最も信頼していた仕事上のパートナーを自殺で失い、夫は無職の覚醒剤中毒者―、という一児の母親が何人か存在したとして、なんの精神疾患も負わずに健やかに生きていっているとしたら、それは、たぶん、奇跡に近いだろう。

わたしは、ここまで「虐待」という言葉を使うことを注意深く避けてきたが、酒井法子というひとは「被虐待児」なのではないだろうか?

「虐待」は、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの四つに大きく分けられるが、暴力を使った虐待はごく一部に過ぎない。親があるがままの子どもを受容しないと、子どもは自信を失い、「いい子にならなければ嫌われてしまう」と、自分の欲求を抑え込んで他人の欲求や期待に応えるために(自分のためではなく他人のために)頑張るようになってしまう。

「しかも、こうした子どもは相手の欲求を満たすという行動を、親に対してだけでなくどこでも再現する。自分の顔を隠し相手の顔色をうかがう生き方は、感情を鈍麻させ生きる喜びも消し去ってしまう」(『虐待 沈黙を破った母親たち』保坂渉・岩波現代文庫)

酒井法子が覚醒剤を使用した部屋には、十歳になる息子がいた。
「暖かい家庭を築きたい」という家族信仰を持っていた彼女は、覚醒剤を使用することによって「母親失格だ」と、自分を激しく責めて罪悪感を持つ。その罪悪感から逃れて、頑張るために、また覚醒剤に手を伸ばす――。
この視点が、テレビや週刊誌の報道からは抜け落ちていた。

『週刊朝日』(二〇〇九年十一月二十日号)の梨元勝の「『介護で反省』を貫け!」というコラムが「虐待」に対する無理解の最たるものだと思う。

「私は、酒井の芸能界復帰には反対の意見だ。“甘やかされた”特権意識の世界に再び戻ることは、常習性を問われた、覚せい剤再犯の危険性を十分はらんでいる。芸能界ではなく、私は介護の仕事を貫いてほしいと思う」

長年芸能界を取材しつづけた梨元氏が芸能界のことを「“甘やかされた”特権意識の世界」と断じているのが、どうにも腑に落ちない。芸能界で「成功」している女性を何人か知っているが、食べる、眠るなどの基本的欲求を充たす時間さえなかなか確保できないほど忙しい割には、大手出版社の編集者並みの月給しかもらえず、行動がかなり制限されるので、「苦界に身を沈める」強い決意とやむを得ない事情がなければ、常人より容姿が優れている、歌唱力がある、演技力があるという「特権意識」で飛び込むことはできても、生き残ることは難しい。

苦界に身を沈めて、輝きを放つことができるのは、この世のどこにも居場所がなく、歌うことでしか生きられない、演じることでしか生きられない者たちだけなのではないだろうか?

先日、ビリー・ホリデイ自伝『奇妙な果実』を読み返した。
十三歳の母親と、十五歳の父親のあいだに生まれた彼女は、生後間もなく母親に棄てられて親戚の家に預けられる。十歳のときに近所の白人にレイプされ、警察に訴えるが、黒人ゆえに合意と認定され、感化院に送致される。十四歳のときに母親と暮らすためにブロードウェイの娼館で売春し、逮捕され、投獄される。二度と売春はしない、と心に誓うが、滞納した家賃を払わなければ明日路上に放り出される、というところまで切羽詰まって、盗みでも殺人でもなんでもしよう、という気持ちで、コートも着ないで真冬の夜道に飛び出す。そして、ダンサーだと偽ってナイトクラブのオーディションを受ける。生まれて初めて客の前でうたった歌は「トラヴェリン・オール・アローン」だった。歌が終わると、そこに居合わせた客たちは皆ビールを置いて、泣いていた。そこから彼女のサクセスストーリーがはじまるのだが、浮気性で麻薬中毒の夫との結婚生活によって麻薬に溺れ、ふたたび投獄されることになる。彼女は五度の監獄生活を経ても麻薬を絶つことができなかった。麻薬は、歌手としての命である声の艶を奪い、音域を狭め、喉にひっかかるようなしゃがれ声しか出せなくなったが、それでも彼女は歌うことをやめなかった。

4、http://megalodon.jp/2010-0309-1614-06/g2.kodansha.co.jp/?p=3777&page=4
「飢えとか愛という言葉をわたしのように歌うひとはいない、という批評がある。たぶん、わたしがそれらの言葉に含まれる意味を、生々しく覚えているからだろう」

酒井法子は、『星の金貨』で耳と口が不自由な看護師見習いの倉本彩を演じた。
赤ん坊のときに親に棄てられ、里親が買ってくれたブランコで親を待ちつづける酒井法子は、幼少期に悲しむことを禁じられた悲しみの居場所を、ドラマという虚構の中に見出したかのように思えた。
『星の金貨』の主題歌「碧いうさぎ」を聴いたとき、彼女の「飢え」と「愛」を生々しく感じた。

父が死んだら、わたしは

酒井法子に関する資料の束に目を通しているうちに、『週刊文春』一九九九年九月十日号の「サンミュージック 相澤秀禎会長独白 酒井法子と岡田有希子」という記事の中の一文を読んで、わたしは魂が凍りつくような気がした。

「お父さんを亡くしたとき、法子は寝台を足で蹴って泣いていた。僕はその場をはずすしかなかった……」

寝台を足で蹴って泣く――、という彼女の姿を想像できなかった。寝台に泣き頽れて枕をつかむ、あるいは寝台を拳で叩くならば、想像することができる。しかし、蹴るという行為は、悲しみよりも憤りを強く表している気がする。寝台を蹴って悲憤する十八歳の少女―、わたしも想像の中で、その場をはずすしかなかったのだが、寝台を蹴る音と咽び泣く声が残響のように、しばらく頭に残っていた。

わたしは、父が死んだら泣くだろうか?

母が死んだら、泣くと思う。
何日も何日も、泣きつづけると思う。
父は――。
なんの感情も湧いてこない。
泣かないのかもしれない。

おそらく、電話をかけてくるのは、上の弟だろう。
電車がある時間だったら、鎌倉駅から横須賀線に乗って保土ヶ谷駅で降りる。
保土ヶ谷駅からタクシーに乗って、行く先を告げる。
「すみません、境之谷に行ってください」
あの家の前で、タクシーを降りる。
三十年前に、家族六人で暮らした家――。
父は、布団の上に横たわっている。
もう目を開けることはない。
もう口をひらくことはない。
わたしは、泣かないと思う。
わたしを支配するのは悲しみではなく、悔いだ。
とてつもなく大きな悔い――。

わたしは父と話をしなければならない、と思ったとき、ひもじそうに煙草を吸う父の顔が、白昼夢のように目の前に浮かんだ。/blockquote>
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by office-nekonote | 2010-03-09 16:20 | | Comments(2)
Commented by ケロタン次郎 at 2010-03-09 17:09 x
何か急にありきたりな文章になってるゲロな。
この人自分の体験以外はまともに書けないのか、それとも知識だけの身になっていない事を書いてるからなのゲロか?

父の問題はケロタンも大きいゲロ。そーいや
「おたまじゃくしは蛙の子、ナマズの孫ではないわいな」
という歌があるゲロが、個人的に口ずさむとメチャメチャ示唆に富んでる歌詞になるところが悲しいゲロ。
Commented by office-nekonote at 2010-03-11 00:19
ケロタン次郎さん、こんばんにゃあ。
>何か急にありきたりな文章になってるゲロな。
はい、いきなりつまらないです。
>この人自分の体験以外はまともに書けないのか、それとも知識だけの身になっていない事を書いてるからなのゲロか?
両方だと思います。きっぱり!!!

それにしても、この展開には(ノ゜⊿゜)ノびっくり!!です。
父親の問題はどこもねえ・・・
じゃあ母はって言えば (´;ェ;`)ウゥ・・・


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