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人間関係で大切なのは「共振」ではなく「境界」

生まれた子供に嫉妬する夫たち
カウンセリングから見えてくるストレスと暴力--信田さよ子氏(前編
)の続き

人間関係で大切なのは「共振」ではなく「境界」
カウンセリングから見えてくるストレスと暴力--信田さよ子氏(後編)
1、http://s04.megalodon.jp/2009-0204-0720-52/business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090107/182133/

信田さよ子(のぶた・さよこ) 1946年生まれ。臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを開設。各種の依存症やドメスティック・バイオレンス、子どもの虐待などに悩む本人や家族へのカウンセリングを行う。著書に『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』(春秋社)、『加害者は変われるか』(ちくま書房)『家族収容所』(講談社)、『愛しすぎる家族が壊れるとき』(岩波書店)など多数。




http://s04.megalodon.jp/2009-0204-0720-52/business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090107/182133/
 「他人を支配すること」と「他人を愛すること」は、実は重なっていて区別がつきにくい。だから、常に自分のしていることを「所有や支配になってはいないだろうか」と振り返る、絶えざる意識が必要になる。原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子さんはそう話す。

 だが、他人を支配することを愛や親密さと取り違えた人の考えを改めることはなかなか難しそうだ。人の心や行動を動かすにはどうすればよいのだろう。

 信田さんは、「誉めること」がキーを握ると言う。たとえ誉める部分がまるでないような人に対しても、わずかな良い点を誉めることが、相手に考え方を変えさせる突破口になるという。さらに、カウンセリングでは相談者との間に「境界」を保つことが、よい関係を取りもつ秘訣だとも話す。仕事でのコミュニケーションでも活かせそうな話だが、その実はどうだろうか。引き続き信田さんにうかがった。

--前編では、愛の名のもとに、支配と暴力が家庭内で起きてしまうメカニズムについて話をしていただきました。理想の家族や夫婦像を抱くと、あるべき正しい姿を基準に判断しがちになります。それが暴力を誘発する原因にもなるのではないかと思います。

信田:DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)加害者の論理は、見事に「愛と思え、受け入れろ」です。加害者の夫の話を黙って聞いていたら、「おっしゃる通り。それができない妻がやっぱり変なのでは」と、思いそうになるくらい正論なのです。
 人間関係で大切なのは「共振」ではなく「境界」_c0011446_7505992.jpg
 でも、待てよと思うのは、夫は常に「どちらが正しいか」を問題にしているからです。「正しいのは俺で、おまえの言い分は正しくない」といったように、家庭で常に“裁判”を行っている。
 そういう環境で育つ子どもは、生き延びるために「勉強さえしていたらいい」という正論を実行します。それだけは絶対に親から批判されない正しい行為だからです。成績のいい子は、いつも裁かれるだけの家族の中で、勉強という安全地帯をもうけて、生き延びていくのです。

--親密さや愛が家族同士の保つべき距離を失わせてしまうなら、何をもって家族を運用すればいいのでしょうか?

信田:思いやりです。それは他者性によって生まれます。家族といえども別の人間なのですから。日本の家族は気遣いばかりを女性に要求しますが、親切な思いやりは少ないのです。

「叱られて伸びる」は後で誉めるから

--晩婚化が進み、また経済力の問題から結婚を避ける若者も増える傾向にあるようです。そういう状況を踏まえると、従来の家族の価値観は変わると思いますか?

信田:経済の停滞を考えると、夫婦はともに働き、子どもを生んだら保育園に預ける。そういうことなしに、家族は形成できないでしょう。
 経済力の不足から結婚を避ける男性がいるなら、「男は女房、子どもを養ってなんぼ」という親世代の価値観に囚われているだけです。
 でも、いまの30代の男性には、妻の経済力も込みで考えて結婚する人はけっこういますし、だから育児にも積極的に関わります。
 昔みたいにふんぞり返っていたらやっていけない。善悪は別にして、新しい家族の形が生まれてくると思います。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090107/182133/?P=2
--家庭の中で成員が“不良債権化”しないために必要なことは何でしょうか?

信田:主観的には良き夫、良き父かもしれないけれど、“無自覚な良心派”ほど恐しいものはありません。家族は私たちの思惑を超えて何かが動いている場です。そのことに自覚的であって欲しいです。

--自覚的であるためには、「家族でありながらも他者と自分がいる」ということを意識させることが重要だと思います。自他の区別のついていない人の行動を変えるには、どういうコミュニケーションを行えばいいのでしょうか?

信田:誉めることです。刑務所の性犯罪者やDVの加害者プログラムに関わっていますが、彼らを責めても変化は起こりません。100のうち5しか誉めるところがなくても、それを評価しないといけない。人は誉められて変わるものだ。そう確信しています。

--叱られて伸びるタイプと誉められて伸びるタイプがいると言われていますが、一律に誉めるのですか?

信田:叱られて伸びているように見えるのは、実は叱られた後で必ず誉められているのです。ファシズムの指導者やカリスマは叱って、いままで持っていた考え方を根こそぎにしてから誉め、特定の考え方を植えつけます。
 そういう方法は洗脳の常套で、がつんと言った後に誉めたらだいたい人はなびくものです。私がそういう方法を取らないのは、もともと人が持っているものを誰も否定できないと考えているからです。

男と女では「誉められて嬉しい」の理由が違う


--100のうち5を誉めるとして、残りの問題点は不問にするのでしょうか?

信田:5を伸ばしつつ、95のほうはいずれ指摘しますし、誉められることで95の部分が変わっていく可能性もあります。
 「あなたの夫で誉められるところはないですか?」と妻に尋ねると「ありません」と一言で返され、「ちょっとでいいからないですか?」と再度聞いたら「丈夫なことくらいですかね」と答えることがあります。
 そんな場合でも、「病気しないで元気で生きていてくれてありがとう」と言うだけで夫は変わっていくものです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090107/182133/?P=3
--信田先生ご自身は、内心認めがたい人を誉めるときに葛藤を覚えませんか?

信田:全くありません。仕事ですからね。
 それにしても男性は誉められることに本当に弱いですね。「今日のネクタイいいですね」だけでいい。意外と着ているものを誉められると喜びますよ。「自分で選ばれたんですか」と尋ね、「妻が選んだ」とでも言えば、「さすが先生の奥さんですね。いいセンスしてますね」。こういうだけで態度が見事に変わります。

--たとえば職場で人間関係を円滑にするため、男性が女性の外見について誉める行為はどうですか?
人間関係で大切なのは「共振」ではなく「境界」_c0011446_7555192.jpg
信田:人によっては、セクハラに思われる可能性があるので注意が必要ですね。
 ただ言えるのは、男性と女性とでは、見られることに対しての考えが異なるのです。
 多くの場合、男性は「自分の容姿が誉められた」と捉えず、「この女は自分に気があるな」「落とせる可能性があるな」と、自分の間尺に合わせて、相手の言葉を解釈してしまいがちです。自分は常に相手を見る側で、「見られる客体」になるとは思っていないのです。
 女性は誉められたら客観的な評価として受け取ります。男性の場合、「自分がどう見られているか」ではなく、「自分を評価している相手の女」を対象化するのです。

境界を作って他者と接する

--相手の発言の意図を素早く汲んだり、言外のニュアンスまで拾ったりしないとカウンセリングという仕事はとうてい務まらないことが分かりました。一方で、コミュニケーション能力が向上するほど、ストレスが溜まることも多いのではないかと思います。

信田:「どこでストレス発散しているんですか」とよく尋ねられますが、仕事で話を聞くことは、ストレスになりません。
 背筋が凍るような話もたくさん聞きます。こちらに器がないと到底聞けない話も多いです。だから、カウンセリングに必要なのは、自分の価値観で相手の話を解釈するのではなく、理解するための“受容の幅”を極限まで広くして聞くことです。幅を広げれば、葛藤を覚えませんし、ストレスになりません。
 頭は疲れますがストレスを抱えないのは、相談者の感情に共振しないからでしょう。不安な人に共振したら、相手もさらに不安になりますから、私たちは絶対に揺らぎません。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090107/182133/?P=4
--相手の話が深刻だと心を揺さぶられやすくなります。話を聞く上で、ぶれないための秘訣はありますか?

信田:私と相手との間に絶対的な境界を作ることです。私はお金をいただいているプロで、相手はクライエントです。同じ人間だけれど踏み越えられない境界があることをはっきりさせます。それを「バウンダリー形成」と言います。「バウンダリー」は「境界」のこと。自己と他者との間に「境界線を引く」といってもいいでしょう。やわに「わかりますよ」などとは同調しません。

--バウンダリー形成は、家族間でも良好な関係を築く上で有効でしょうか?

信田:ええ。それに、会社での対人関係でも有効と言えると思います。バウンダリーのある人は、むしろ言葉を超えた安心感を周囲に与えます。だから、親密さよりも、すきま風が少し吹き込むくらいの関係の方がいいのだと思います。

--会社でも家庭でも、「境界を作って他者と接する」という意識を持つことが大切なのですね。

信田:妻や家族が自分と相容れないことを言ったとき、夫が激昂するのは、そこに境界を認めないからです。

 たとえ夫婦の間柄でも本当のことは分かりません。だからこそ親切にもなれるし、思いやることもできます。境界を作るのは、他者は理解不可能だからです。人間関係のストレス軽減のコツだと思います。

(文/尹雄大、写真/風間仁一郎、企画・編集/漆原次郎&連結社

by office-nekonote | 2009-02-04 07:25 | アディクション


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