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【連載 被害児それから 心の傷と向き合う 4】許せなくても連鎖断つ

【連載 被害児それから 心の傷と向き合う 4】許せなくても連鎖断つ
西日本新聞 2011年6月27日 19:45
http://megalodon.jp/2011-0629-0002-47/www.nishinippon.co.jp/nnp/item/250631

【連載 被害児それから 心の傷と向き合う 6】寄り添い続けて、こそ
西日本新聞 
2011年6月27日 19:46
http://megalodon.jp/2011-0629-0004-19/www.nishinippon.co.jp/nnp/item/250629


◆特集「命を守る 児童虐待根絶へ」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article2/



【連載 被害児それから 心の傷と向き合う 4】許せなくても連鎖断つ
西日本新聞 2011年6月27日 19:45
http://megalodon.jp/2011-0629-0002-47/www.nishinippon.co.jp/nnp/item/250631

 「感情を抑えられない。どうしても息子をたたいてしまうんです」

 カウンセリングを通じて児童虐待防止に取り組む民間団体「STOP!ABUSE」の代表、広渡麗子(34)=北九州市=の元には、虐待に悩む親たちから電話やメールによる相談が連日届く。多い日で200件。

 「みんな過去の傷が癒えないまま親になっているんです」。「負の連鎖」の理由を、麗子はそう分析する。ほとんどが、かつては虐待の「被害者」だった。

 娘が4歳になる30代の母親もその一人。おむつを替え、ごはんを食べさせる。かわいがるほどに、えたいの知れない感情が込み上げてきた。「私はこんなに愛されることはなかったのに…」。家事も手がつかなくなり、悩みを深めていた。

 心療内科や精神科に行っても、感情を抑える薬を処方されて終わる例も少なくない。ある女性は渡される薬に依存するばかりで「つらさが解消されない」と訴えてきた。

 「年を重ねても傷は癒えない。根っこにあるものを解決しないと」

 そう語る麗子も虐待被害者の一人だった。

   ■   ■

 母は父と離婚後、祖父母の元で乳飲み子の麗子を育てた。情緒不安定な母は、思うようにならないと麗子の顔を殴り、鼻の骨を折ったこともある。祖母も一緒になって手を上げた。2人をいさめてくれた祖父が亡くなると、虐待はエスカレートした。

 中学生のころ、祖母が重ねた借金返済に風俗店で半年間、働かされた。初日、拒んだ客に鼻血が出るまで殴られた。5千円を渡された帰り道。気がつくと祖父の墓前で泣いていた。

 「私なんか、どうにでもなればいいんだ」。20歳を過ぎても水商売と風俗の世界を行き来する生活。精神のバランスは崩壊寸前だった。

 25歳の時、10歳年上の大輔=仮名=との出会いが転機になった。「私は生きる価値のない人間」とうつむく麗子に、「そんなことあるか」と本気で怒ってくれた。大輔も幼少期、アルコール依存症の父に虐待を受けたと打ち明けた。父の暴力から姉をかばって、包丁で切られたという腹の傷痕が「重い過去」を物語っていた。

 大輔がしみじみ話してくれたことがある。「親に愛されなかったのはおまえのせいじゃない。でも自分を取り戻すには、背負ったもんに向き合うしかない」

 父を憎み、父のようにならないと誓って生きてきた大輔。しかし、父が死んだ時は葬儀を行ったと聞いた。彼なりの区切りの付け方だった。

   ■   ■

 20歳のころ、麗子は母から一度だけ、父と別れた理由を聞いたことがある。暴力が原因だった。結婚後、浮気を疑われ部屋に監禁された。ノイローゼから麗子を手にかける寸前で、祖父に救い出されたという。だが、その時は母の話を受け入れられなかった。

 母親による虐待の要因には、夫の暴力からくるストレスがあるといわれる。「私も過去に向き合ってみようか」。信頼する大輔との出会いが麗子の気持ちを動かした。母は許せない。でも、それでいいのか-。麗子が達した結論はこうだ。

 「母が私にした行為は許せない。だけど、母の苦しみは分かる」。あの時の母に、寄り添ってくれる人がいれば…。

 加害者も被害者もつくらない。そんな思いで昨春、立ち上げたのが「STOP!」だった。

 「娘と積み木をして遊べました」。4歳の子を持つあの母親から先日、少し明るいメールが届いた。

(文中敬称略)

 ◆親の心理ケア◆

 児童虐待の対策として近年、被害児だけでなく親の心理ケアも重視され、各地で取り組みが始まっている。東京都児童相談センターでは、虐待する親のグループカウンセリングを導入。大阪府や大阪市の児童相談所では民間団体に委託し、虐待に悩む親が?人1組で体験を語る「MY TREE ペアレンツ・プログラム」を実施、一定の効果を挙げているという。

=2011/06/20付 西日本新聞朝刊=


連載 被害児それから 心の傷と向き合う 6】寄り添い続けて、こそ
西日本新聞 
2011年6月27日 19:46
http://megalodon.jp/2011-0629-0004-19/www.nishinippon.co.jp/nnp/item/250629
 携帯電話が鳴ったのは土曜日の午後11時。福岡県大牟田市の児童家庭支援センター「あまぎやま」の主任相談員、坂口明夫(38)が自宅でくつろいでいたときだった。

 「先生、私、またやってしまいそう…」

 センター敷地内にある児童養護施設で小3から高3まで過ごした女性からだった。母親は失踪、父親から性的虐待を受けて育った。今は30歳のシングルマザーとなり、小学生の息子への接し方で悩んでいた。

 翌日の日曜日。待ち合わせた喫茶店に子連れで現れた女性は「これ以上一緒におると、たたいてしまう」と訴えた。「その前に、よく俺に電話した。それでいいとよ」。ゲームセンターで子どもが好きなゲームを3人でしたら、女性は少し楽になったようだった。

 児童養護施設の支援対象は原則18歳未満。支援は終わっているが、坂口は時々「どげんしとるね」と電話をする。「虐待の傷は一生癒えない。それは僕が一番知っているから」

   ■    ■

 左手中指には彫刻刀。左手甲にはたばこ。右ふくらはぎにはアイロン-。坂口の体にはすさまじい虐待の痕跡が残る。

 九州各地の親戚の家を転々とし、中3までに姓は7回変わった。毎日が暴力の嵐だった。ある家ではアルコール依存症の養父から、別の家では夫の暴力のはけ口として養母から…。実の父母は、生まれて間もなく交通事故死したと聞かされた。真偽は分からない。知りたくもなかった。

 「何で普通の家に生まれんかったとやろ」「生きていても仕方なか」。自殺も考えた。踏みとどまったのは、救ってくれる人たちとの出会いがあったからだ。

 最後の養父が病死し、身寄りがなくなった中3のときは、自宅に3カ月間泊めてくれた教諭がいた。高校時代は遺族年金とアルバイト代でアパートに1人暮らし。年金が切れた高3のとき、友人の親たちが生活費をかき集めてくれた。涙が止まらなかった。

 児童養護施設で出会った職員の一人もそうだ。高3で入所が検討されたのをきっかけに仲良くなった。施設に遊びに行くうちに、自分と同じ境遇の子がたくさんいることを知った。

 「おまえなら分かることもあるやろ。この仕事、やってみんか」と誘ってくれた。高校卒業後、アルバイトをしながら社会福祉士になるため通信教育で学んだ。1年後、その施設に職を得た。

   ■    ■

 職場結婚した妻と2人の子と暮らす。自分もいつか「虐待の連鎖」の加害者にならないか-。不安は消えない。だが日々接する傷ついた子どもたちの存在が、押しとどめてくれている。

 「この子たちを少しでもいい方にもっていくことで、自分も救われているのかもしれない」

 施設職員として18年。今はセンターに籍を置き、施設に入所する子のほか、虐待が疑われる親子や不登校の生徒ら施設外の市民からの相談にも乗る。電話相談だけで終わらず、自宅に日参したり、学校の運動会に顔を出したり…。そうして相談者の様子を確認する。

 「おまえのこと忘れてないよ、というメッセージなんです。本当にぎりぎりまで追い詰められたとき、僕を思い出して電話をくれる。それだけで万々歳」

 どんなに尽くしても、事態が劇的に好転することはない。それでも、寄り添い続けることが使命だと信じている。

(文中敬称略)
=終わり=

 ◆児童家庭支援センター◆

 1998年の児童福祉法改正で児童相談所を補完する目的で設けられた。今年4月現在、86カ所(九州は6カ所)。児童養護施設をもつ社会福祉法人などが運営する。虐待や引きこもり、発達障害などについて市民からの相談に応じたり、児童相談所から委託された子どもを支援したりする。各機関が連携して虐待を防ぐ「要保護児童対策地域協議会」の指導・調整役も果たしている。

=2011/06/22付 西日本新聞朝刊=

by office-nekonote | 2011-06-29 00:06 | アディクション


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